現代中国語の副詞“正”が動詞や形容詞述語文に現れる場合、意味的に3つのタイプに分けられる。①「時間一致」:ある時間を参照点として、“正”はある事態の時間的位置が参照点たる時間と一致することを示す。②「空間一致」:ある空間的な位置を参照点として、“正”はある事態参加者の空間的位置が参照点たる位置と一致することを示す。③「認識一致」:“正”は命題の真理条件とは関係なく、参照点としての命題内容が話者の認識と一致することを示す。
 認知文法の観点からすると、“正”はスキーマ・レベル(schematic level)では「対象を基準に位置付ける」ことを表している。“正”の意味解釈は、実際に現れた“正”を解釈する際に、いかに認知ドメインを取捨選択するかによっている。ある事例にある“正”の意味解釈する際に「時間ドメイン」・「空間ドメイン」・「認識ドメイン」のいずれかを選ぶにはそれぞれの選択制限(selectional restriction)を満足する必要がある。
 時間一致の選択制限は、基準時間の存在と位置づけられた対象の時間的有界性に関わる。さらに、瞬時性のある事象を表す動詞句と共起する場合、“正”が基準時において事象が瞬時的に実現することを表し、一方、瞬時性のない事象を表す動詞句と共起する場合、“正”が基準時において事象が持続中・未完了であることを表す。空間一致の選択制限は空間的位置変化の結果を提示する成分が必要である。また、認識一致は、認識内容をプロフィールする成分が必要である。
 以上のように、本稿では,まず言語現象を記述し、共起する動詞句の言語形式と“正”の意味解釈の傾向との関係を探る。その上で、認知言語学の観点から言語現象を説明してみた。