本稿は,日本人大学生を対象としたアンケート調査の結果をもとに,放送自習教材による外国語学習の特性について考察するものである.
放送自習教材を用いた学習は,教師の直接の指導を受けないという点では自習の一形態とみなされる.しかし,実際には学習の内容,方法,時間,ペース,教材などの決定は,学習者自身ではなく,教材制作者や放送局などによって外部的に行われる.したがって,上述の要素を全て学習者自身が決定する「学習者主導型の自習」とは異なり,「教材主導型の自習」と分類される.
本調査では,このような特性を備えた放送自習教材を用いた外国語学習において,学習者がどのように教材を利用しているのか,どのような利点および問題点を感じているのか,またその問題点をどのようにして克服しているのかに焦点をあてた.
調査の結果,前述の特性が学習者にとって利点として働く一方で,問題点としても働くことが読み取れる.完全な学習者主導型の自習と違い,学習の内容やその配分,ペースなどの決定を専門家である教材制作者が代行してくれるため,学習の継続が容易になるという利点が挙げられる反面,一方ではこれらの制限が学習に大きな困難をきたし,最悪の場合学習の放棄の原因となりうることが浮かび上がってくる.
これら問題点を克服する方法として,リスニング力改善や日常表現を増やすなど,自分なりの目標を設定し,自分なりの方法で教材を利用する例などが見られる.また,報告された利用法の中には,教材利用の前提とされない方法が見られたり,逆に前提とされる活動が行われない例が見られた.以上の結果によって,教材主導型の自習においても,学習者の役割が決して受動的でないことがうかがわれ,この問題のさらなる追及の必要性が示唆される.